電力市場が自由化して早くも5年が経とうとしています。
各社の競争も落ち着きを見せたかと思いきや、セカンドウェーブを狙った顧客獲得競争は激しくなってきています。
そんな中、一部の悪質な電力会社が顧客をだまして契約させるというトラブルが後を絶たず、消費者センターには毎月数十件の相談があるとのこと。
本記事では、そういった悪質な新電力の営業トークを紹介するとともに注意点を解説していきます。
・現在勤める会社で「電話・訪問」を使った電力営業チームを担当
・電気事業法や特定商取引法などの法律の勉強は月1回実施
・経済産業省が定めるマナーやルールも徹底して遵守
・記事は、上記の業務を通じて得た知見を元に執筆
目次
電力自由化詐欺とは?
2016年の電力自由化をきっかけに横行している、電力契約の知識に乏しい消費者を狙った悪質な営業行為のことです。
強盗や脅迫などといった法的にアウトなのは言語道断ですが、そこまでに至らなくても巧みに「勘違い」を引き起こさせるような営業トークも横行しています。
俗にいう「グレーゾーン」といったものですね。
どんな人がターゲットにされやすいか
60代以上の年配者、20代前半の若年層が電力自由化詐欺のターゲットにされやすいとされています。
詐欺被害者に共通しているのは、電力自由化に対する知識が乏しいという点と、悪質な訪問営業や電話営業に対する警戒心が薄いという点です。
- 大学進学のために東京で1人暮らしを始めた大学生
- 子が独立し老夫婦の2人暮らし
- 配偶者が他界し高齢者の1人暮らし
例えば、こういった世帯に当たった時、悪質営業マンは絶対に逃すまいとしてあれこれと丸め込みにかかります。
周囲や身内に当てはまる方がいれば注意を促してあげましょう。
よくある悪質営業手法4選
電力自由化詐欺の概要・ターゲットとなる人について確認してきましたが、具体的には、どんな営業トークが横行しているのでしょうか。
事実と違ったり、消費者を勘違いさせることを目的とするような悪質な営業手法に解説を交えて紹介していきます。
地域・建物単位で電力会社が変わると誤認させる
下記のような営業トークで、消費者に勘違いを起こさせ→契約を狙ってきます。
- この地域の担当電力会社が変わりました
- この建物の担当電力会社が変わったので手続きに来ました
- 東京電力と提携してこの地域を担当することになりました
何も知らない状態で急にこんなことを聞いたら「みんなやらなくちゃいけないことなんだ」と思ってしまいそうですよね。
言われるがままに検針票を見せたり、書類にサインはしないように!
仮にするとしても内容をしっかり確認・理解してからにしましょう。
現契約先の更新手続きなどと思い込ませる
こちらも同じく、消費者に勘違いを起こさせ→契約を狙ってきます。
- 登録内容の更新手続きに来ました
- 請求する料金を間違ったので、検針票の確認だけしに来ました
- 今より安いプランに変わるだけなので手続きだけお願いします
単純な変更・確認のための手続きだと思ったら、いつの間にか契約変更をされてしまっていたというケースが報告されています。
この手の手法では、「現在の契約先」と思わせるよう妙に親しげに話しかけてくるという特徴があります。
落ち着いて所属確認、訪問なら名刺を求めましょう。
もし、「手続きのために検針票を見せてほしい」などと言ってきたらほぼ黒です。絶対に見せてはいけません。
電気代の削減額が異常に大きい
電気代の削減額の相場は5%~10%程度と言われていますが、契約させようと誇張してくるパターンです。
- 特別なルートで電力調達をしますので半額にできます
- 電気代が月1万円以上安くなります
- 他社は5%程度ですが、うちなら30%以上は削減可能です
本記事で紹介するトークの中でも怪しさ満点ですが、そう思わせないよう巧みに専門用語を混ぜてきます。
仮に「安い!」と思ってもどのような根拠があるのか確認することが大事になってきます。
仮に本当の値引き率だとしても「相場を大きく超える値引き=赤字経営の可能性大」ですので、契約するのはオススメできません。
大手電力会社の名前を必要以上に出してくる
東京電力や関西電力などの知名度を利用し、消費者に誤解を与え→契約を狙ってくるパターンです。
- 当社は東京電力と提携し、格安で電気を仕入れいています
- 今回、東京電力の依頼で手続きに来ました
- 関西電力系列の格安ブランドを新たに立ち上げました
3つ目の「格安ブランドを立ち上げた」というのは本当のケースもありますが、代理店や取次店などでもないのに、やたら大手電力会社の名前を使ってくるパターンがあります。
手続きだけと勘違いさせるケースと同様、落ち着いて所属確認、訪問なら名刺を求めましょう。
代理店・取次店ならば必ずその旨の記述があるはずです。
また、「東京電力と同じ電力システムを使っている」と伝えてくるケースもありますが、どの新電力会社も共有していますので、当然”提携”などとは言えません。
訪問営業・電話営業への注意点まとめ
ここまで、電力自由化詐欺のターゲット、よく使われる悪質営業手法を確認してきました。
最後に、新電力の訪問営業・電話営業を受けた時の注意点をまとめます。
- 必ず、社名と連絡先を聞く
- 契約すると決めるまで検針票を見せない
- 安くなる根拠は何なのか確認する
- 契約前・解約時の手数料の有無を確認する
上記の4点が肝心です。一つ一つ見ていきましょう。
これは新電力の営業に限った話ではありませんが、相手がどこの誰なのか知らずに話をするのは大変危険です。
訪問なら名刺を求め、電話なら「会社名と連絡先、あなたの名前を教えて」と聞きましょう。
もしそれを拒否されたりはぐらかされたりする場合は、まともな会社とは言えませんので、絶対にこちらの情報を伝えてはいけません。
検針票やWEB上のマイページには、下記のように電力会社の切り替えに必要な情報がすべて入っています。
- 契約名義
- 契約者の住所や電話番号
- 契約者の支払い情報(電気料金など)
- 電力供給地点特定番号
- 電力会社のお客さま番号
- 契約アンペア数や契約プラン
このように検針票にはあらゆる情報が書かれており、知識がある人に見られれば勝手に電力会社切り替えることができてしまう可能性があります。
営業マンの説明に納得し「契約しよう」と思えたなら教えても問題ありませんが、それまでは検針票の内容は決して教えてはいけません。
「誰でも・必ず・リスクなし」などとメリットばかり説明してくる場合には、簡単に信用してはいけません。
新電力が提供するプランの多くは向き・不向きが分かれます。
本当は「(使用量が多い人は)安くなる」だけなのに、誇張している可能性がありますので、その根拠をよく確認するようにしましょう。
自信がない場合は、パンフレットだけを貰ってその日は帰ってもらうのが無難です。(電話営業なら”検討しておきます”と断って電話を切ってください)
月々の料金が安くなっても、契約事務手数料や解約金で数千~1万円程度かかるケースが稀ですが存在します。
このような「契約にかかわる重要事項」は法律で説明義務があるのですが、断られることを恐れる営業マンは隠す可能性があります。
これを回避するために「手数料や解約金は無いですよね」と一言確認を行い、契約書面やパンフレット等でも必ず確認しましょう。
- 契約時に説明がなかった解約金に気づいた
- 料金表と営業担当者の説明が明らかに違う
- 電力会社の切り替えであるという認識がなかった
もし、上記のようなケースに当てはまった場合、8日間以内なら無条件で契約解除が可能です。(クーリングオフ制度)
また故意に誤認させる等の行為があったと認められれば、8日を経過していてもクーリングオフの適用が認められる可能性もあります。
早急に消費者センターに相談しアドバイスを受けましょう。
参考 電力・ガスの勧誘を受けた際には契約先・契約内容をよく確認しましょう独立行政法人 国民生活センター